黄昏の刻 第6話 |
「違う!間違っているぞ玉城!その骨は断じてその部位の骨ではない!!」 聞こえないと解っていても、ルルーシュは玉城の言葉を否定するために声を張り上げたが、やはりルルーシュの声は風のささやき程の力も無く、いつものごとくスルーされた。 「ほらほらカレンもよく見ろよ!ルルーシュのチ○コの骨だぜ!」 ほ~らほ~らじっくり見ろよと、お前とっくに成人超えてるよな?やってることは小学生か?と思うような言動で、玉城は一つの骨を割りばしでつまんでいた。 女性に対して何て下品な事を!! 「ちょ、止めてよね、玉城!!」 カレンが顔を真っ赤にして、玉城から逃げ出した。 力づくで玉城を止めたいが、残念ながらすり抜けてしまう。 「なんだよ、いいじゃね~か骨ぐらいよ。ほら、滅多に見れないんだから良く見とけ!あ、そうだ。カレンの骨壷にこれ、いれてやるからな~」 「馬鹿!変態!最低っ!!」 ニヤニヤと笑いながら言う玉城に大志、カレンは顔を真っ赤にして怒鳴った。そんなカレンを面白がり、玉城は追いまわそうとするが、それを一人の男が阻止した。 「へーこれがそうなんだ。初めて見たよ」 それは聞き慣れた声なのだが、セブンだった頃を思いださせるような、不機嫌で低い声だった。って待て!仮面は何処に行った!なぜ平然と素顔を晒してるんだ!という風体のスザクが、骨をつまんでいる玉城の腕をつかんでいた。 「流石スザク!お前なら止めてくれると信じていたぞ!」 だが、よく見るとスザクの反応はいまいちおかしい。 まじまじと玉城のつまんでいる骨を見ている。 何故かその瞳が、ギラリとした獰猛な獣に見えるのは気のせいに違いない。 きっと、また俺の事を心の中で馬鹿にしているのだろう。俺の遺体を清めていた時のように、俺をナナリー達の前でど・・・清い体だと言った時のように。 「って、違う!この馬鹿スザク!その部位に骨なんて無いことぐらい常識だろうが!何本気にしてるんだ!馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、そこまで馬鹿なのか!」 ああ、だがスザクは小学校までしかまともに通っていなかった。突然高校に入学したが、その間をすっ飛ばしている。人体の事を学ぶ機会はなかったのかもしれない。玉城に至っては、もし学んでいたとしても綺麗さっぱり忘れている。そのせいで、この二人は本気でその部位の骨だと思い込んでいるのだ。 ああくそ、馬鹿二人を絡ませないでくれ!誰か、止めさせろ!連呼させるな! 「ここにはカレンだけじゃない!ナナリーがいるんだ!!そんな言葉をナナリーに聞かせるな!!ナナリーの耳が穢れる!!」 そんな思いは当然届かず、他の者たちが粛々と骨壷に骨を納めていく中、玉城はその骨がそうなのだとひたすら連呼していた。 「おいロイド、セシル、ラクシャータ!笑ってないで止めろ馬鹿!藤堂、お前も苦笑している場合か!リヴァル!お前もだ!腹を抱えて笑ってるな!!」 女性はもしかしたら知らないかもしれないから、驚くのは仕方がないし、カレンに至っては本当にその骨だと信じ込んでしまっている。 純真無垢で人を疑う事を知らないナナリーも信じている可能性が高い。 「ああくそ!スザク!玉城!お前らはいい加減にしろ!本気で祟るぞ!」 そんな俺の言葉が通じたのか、二人を止める者が現れた。 「なるほどな、馬鹿だ馬鹿だと私も思っていたが、まさかここまでとはな。いいか馬鹿ども良く聞け。チ○コに骨など存在しない。焼いた際に何処かの骨がはぜて、たまたまそのあたりに飛んだだけのごく普通の骨だ」 ようやくかとほっと息を吐いたのだが。 その声に、全員の視線が向く。 そこには、新緑の髪を靡かせた美少女が、喪服を着て立っていた。 「止めてくれたのは嬉しいが、仮にもお前は女なんだから、下品な言葉を口にするな」 聞こえないと解っていてもつい言ってしまう。ああ、虚しい。 「C.C.来たのね」 遅かったじゃない! 玉城の攻撃から逃れられると、カレンは笑顔でC.C.に駆け寄った。 「ああ、少し調べたい事があってな」 「・・・で、今の話は本当なの?」 カレンはおずおずとC.C.に尋ねた。 「ん?あの骨がアレの骨かどうかか?人間の男のモノに骨はない」 常識、だろう? C.C.がそう言うと、この状況を楽しんでいたリヴァル達は、あーあ、ばらしちゃったよと苦笑し、スザクは掴んでいた玉城の腕を離した。 「まったく、今は葬式中だろうに、やけに賑やかだと思ったら、こんな面白い状況になっていたとはな」 もっと早くに来るんだったと、魔女は口元に弧を描いた。 「何処が楽しいのよ!あーもー玉城もスザクも下品すぎるわよ!最低っ!!」 カレンの怒鳴り声で、玉城は「えー!?何言ってんだよ、絶対骨はあるって!」と何時までも認めないため、ロイドが「仕方ないですねぇ」と、人体に関して説明を始めた。 これで玉城の勘違いは正されるし、スザクは周りの反応で理解したようだ。 玉城が静かになったことで、再び静まり返ったその場所では、骨が骨壷に入る音だけが響き渡った。 「・・・なるほど、そう言う事か」 それは、静寂の中でも辺りには聞こえないほど、本当に小さなつぶやきだった。 耳元でささやかれない限り聞こえないほどの小さなささやき。 現にC.C.の言葉を拾ったものはいない。 拾えたのは、ただ一人。 「・・・お前、俺が見えるのか」 部屋の出入口の隅にいたルルーシュと、ほぼ体が重なる形で立っていたC.C.は、その視線をルルーシュの瞳に向けた。 そしてその口元がゆるく弧を描く。 「言っただろう、面白い事になっていたのか、と」 それは、玉城とスザクのやり取りの話ではなく、今のルルーシュの事を指していた。 ******** 何時もと違う流れにしたかった結果の下ネタ。 書いた当時も、校正している今も、後悔してるどそのまま載せる。 |